毎朝の楽しみであるNHK連続テレビ小説。2025年度前期の『あんぱん』が始まり、期待に胸を膨らませてテレビをつけた瞬間、流れてきた主題歌に「あれ?」と戸惑いを感じませんでしたか?
岡田さん(48歳)アンパンマンの物語だから、もっと明るくて元気な曲を想像していたのに……。米津玄師さんの『ぎりぎり』は、なんだかザラついていて、朝から聴くには少し重たい気がする。私だけが「ひどい」と感じているのかしら?
そう感じてしまうのは、あなたが決して「感性が古い」からではありません。むしろ、これまでの朝ドラや『アンパンマン』という作品を大切に思ってきたからこその、真っ当な反応だと言えます。
初めてイントロを聴いた時、私も正直「おや?」と思いました。私たちが知っているアンパンマンの優しさとは少し違う、剥き出しの生命力を感じたからです。しかし、本作のモデルであるやなせたかしさんの生涯を深く知ると、この「違和感」こそが、制作陣が仕掛けた最大のメッセージであることに気づかされます。
この記事では、なぜ『あんぱん』の主題歌に「ひどい」「合わない」という声が上がっているのか、その正体を整理しながら、米津玄師さんの楽曲に込められた真意を読み解いていきます。


NHK連続テレビ小説・国内ドラマ分析
毎朝の「朝ドラ受け」を欠かさないドラマ愛好家。長年のファンが抱く「違和感」を大切にしながら、制作陣が作品に込めた意図を丁寧に紐解き、視聴者の皆様と作品の架け橋になることをモットーとしています。
なぜ「コレジャナイ感」があるのか?SNSで噴出する3つの批判的意見
放送開始直後、SNS上では主題歌に対してさまざまな意見が飛び交いました。特に長年の朝ドラファンや、お子さんと一緒にアンパンマンを楽しんできた世代からは、以下のような「違和感」が共通して聞かれます。
1. アーティストと作品イメージのミスマッチ
「米津玄師=スタイリッシュ、ダーク、現代的」というイメージが強く、昭和の激動期を描く物語や、素朴な「あんぱん」というタイトルとの距離感に戸惑う声です。
2. 『アンパンマンのマーチ』とのギャップ
私たちは無意識のうちに、あの明るく勇壮な行進曲を期待してしまいます。それに対し、『ぎりぎり』が持つ切迫感や泥臭さは、「理想化されたヒーロー像」とは対極にある「生身の人間」を突きつけてくるため、拒否反応が出てしまうのです。
3. 朝の空気感との乖離
「一日の始まりは爽やかに迎えたい」という視聴者にとって、米津さんの独特なリズムや深い歌声は、少し刺激が強すぎると感じられるケースもあるようです。
これらの意見は、どれも作品を真剣に観ようとしているからこそ生まれるものです。しかし、この「違和感」の裏側には、NHK制作陣の並々ならぬ「覚悟」が隠されています。
米津玄師×やなせたかし:あえて「爽やかさ」を捨てた制作陣の狙い
なぜ、NHKはあえて王道の「爽やかな朝ドラソング」を選ばなかったのでしょうか。それは、このドラマが単なる「アンパンマン誕生秘話」ではなく、「何者でもなかった若者が、絶望の淵で生きる意味を見出すまでの物語」だからです。
米津玄師さんとやなせたかしさん。一見、遠い世界にいる二人の表現者ですが、その根底には共通する哲学があります。それは、「孤独や欠落を抱えながらも、それでもなお生きる」という、泥臭いまでの生命賛歌です。
やなせさんは、戦争で弟を亡くし、自身も飢えに苦しむ中で「本当の正義とは何か」を問い続けました。米津さんの『ぎりぎり』というタイトルは、まさにその極限状態(ぎりぎり)の中で、誰かのためになろうとした人間の本質を射抜いています。
制作陣は、視聴者に「心地よい朝」を提供するだけでなく、やなせさんが生涯をかけて伝えたかった「生きることの過酷さと、その先にある喜び」を、米津さんの歌声を通じて届けようとしているのです。
【結論】: 今感じている「違和感」を、無理に消そうとしなくて大丈夫です。
なぜなら、朝ドラの主題歌は「ドラマのあらすじ」そのものだからです。物語が進み、主人公たちが困難に直面するたびに、この『ぎりぎり』という曲の歌詞が、驚くほど心にフィットしていく瞬間が必ず訪れます。今はまだ「知らない誰かの歌」かもしれませんが、数ヶ月後には「私たちの物語の歌」に変わっているはずです。
過去の朝ドラにもあった「最初は不評」からの大逆転。スルメ曲になる条件とは?
実は、放送開始時に「ひどい」「合わない」と叩かれた楽曲が、最終回を迎える頃には「この曲以外ありえない!」と絶賛される現象は、朝ドラにおいて珍しいことではありません。
【比較表】放送初期に賛否が分かれた近年の朝ドラ主題歌
| 作品名 | アーティスト | 初期の反応 | その後の評価 |
|---|---|---|---|
| ブギウギ | 中納良恵・さかいゆう・趣里 | 「騒がしい」「朝から疲れる」 | 物語の熱量と合致し、毎朝元気がもらえると絶賛 |
| なつぞら | スピッツ | 「地味すぎる」「盛り上がりに欠ける」 | 優しい世界観に寄り添う名曲として定着 |
| あんぱん | 米津玄師 | 「暗い」「アンパンマンらしくない」 | (予測)やなせ氏の苦闘と重なり、涙を誘う「スルメ曲」へ |
これらの楽曲に共通するのは、「物語の進行とともに、歌詞の意味が書き換わっていく」という点です。最初は単なるメロディとして聴いていたものが、主人公の挫折や成功を目の当たりにすることで、視聴者自身の体験と結びついていきます。
『ぎりぎり』も同様です。今はまだ「米津玄師の曲」として聴こえているかもしれませんが、ドラマの中でやなせさん(劇中では柳井嵩)が、戦後の混乱期に「アンパンマン」の種を見つける過程を観ていくうちに、この曲の持つ「切実さ」が、かけがえのない応援歌に変わっていくでしょう。
まとめ:その違和感は、物語への入り口
『あんぱん』の主題歌に感じた「ひどい」という違和感。それは、あなたが作品に対して誠実であり、これまでの『アンパンマン』という文化を愛している証拠です。
しかし、米津玄師さんが描いたのは、私たちが知っている「完成されたヒーロー」ではなく、「ぎりぎりのところで踏ん張り、誰かのためにパンを焼こうとした一人の人間」の姿です。その泥臭い真実を知った時、あなたの耳に届くメロディは、きっと今とは違う響きを持っているはずです。
まずは第1週、物語の背景をじっくりと見届けてみませんか? 画面の中で懸命に生きる登場人物たちと楽曲が重なった時、あなたの「違和感」は、きっと「納得」と「感動」に変わるはずです。
参考文献・出典
2025年度前期 連続テレビ小説「あんぱん」主題歌決定 – NHK公式サイト
米津玄師、朝ドラ主題歌『ぎりぎり』批評 – Real Sound




